甲状腺術後のフォローアップ
手術後甲状腺機能低下症
甲状腺全摘術や準全摘術(ほとんどの甲状腺を切除)を受けられた場合は、生涯に渡り甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を内服する必要があります。
また甲状腺葉切除術(甲状腺の左右どちらかを切除)や甲状腺葉峡部切除術(甲状腺の左右どちらかと中央部分を含めた切除)の場合でも内服が必要となる場合があります。
内服量については、病気の状況(良性や悪性、悪性であれば進行度)により、調整することになります。
手術後副甲状腺機能低下症
甲状腺の裏側に、米粒大の小さな臓器である副甲状腺があります。甲状腺全摘出術を行うと近くにある副甲状腺もダメージを受けたり、一緒に摘出されてしまったりします。摘出された副甲状腺は「自家移植(手術中に筋肉内に細切して埋め込む)」をおこない、できる限りご自身の副甲状腺機能が維持できるよう配慮します。
しかしながら機能が回復しない場合、副甲状腺機能が低下し血液中のカルシウムが低下して手足や口の周りのしびれが出現したりします。
その場合には、カルシウム剤やビタミンD製剤の補充をすることで症状を改善します。
なかには生涯にわたって内服が必要なこともあります。
「甲状腺がん」術後の経過観察
期間
定期的に外来で体調や再発の有無を確認します。甲状腺がん(乳頭がんや濾胞がん)の手術後は10年以上、できれば20年以上長期に行うことが望ましい病気です。
頻度
一般的には手術後1~2年間は1~3カ月ごと、手術後2~3年間は6カ月ごとに実施されています。ただし、手術後に薬物療法が実施される患者さんでは治療内容に合わせた通院が必要となります。
検査項目
手術や術後病理検査結果により治療内容は異なりますが、一般的には問診、視診・触診のほか、血液検査、超音波(エコー)、CT、シンチグラフィ―検査などを行います。
副甲状腺疾患
副甲状腺とは、その働き
副甲状腺は、甲状腺の裏に左右・上下に一つずつ合計4個あり、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌しています。主な働きは、血液中のカルシウム濃度を一定に保つことで、骨からカルシウムを遊離させたり、腎臓からカルシウムを再吸収させたりしています。骨に対しては、破骨細胞(骨を壊す細胞)を活性化して骨吸収を促進させる働きと骨芽細胞(骨を作る)を刺激させ骨形成を促す働きがあり、この過程でカルシウムが血液中に遊離します。
原発性副甲状腺機能亢進症
副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。その結果、血液中のカルシウム濃度が上昇し、尿路結石、骨粗しょう症や高カルシウム血症によるさまざまな症状を引き起こします。
約4,000~5,000人に1人の割合で発見される病気ですが、多くは良性でがんの割合は約1~5%といわれ、がんと遭遇することはごくまれといえます。
症状
悪心、嘔吐、食欲不振、胃潰瘍、多尿、口渇、腎機能低下、尿路結石、情緒不安定、意識障害(重症)
検査
血液検査や尿検査で病気を診断し、病気となっている副甲状腺を同定するために、頚部超音波検査、アイソトープ検査(副甲状腺シンチグラフィ)、頚部CT検査などを行います。 (当クリニックでできない検査についてはご紹介いたします)
治療
根本的な治療法は、手術により腫大した副甲状腺病変の摘出です。入院して全身麻酔下で手術を行います。
適切な検査・治療を受けていただけるように連携病院へのご紹介をいたします。
副甲状腺機能亢進症には、副甲状腺そのものに原因がある場合を「原発性」と呼び、進行した腎臓病などにより副甲状腺ホルモンが代償性に過剰に分泌される病気の場合は「続発性(二次性)」と呼び、区別しています。
続発性副甲状腺機能亢進症
副甲状腺そのものではなく、慢性腎不全などの副甲状腺以外の病気が原因で副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され骨に強く影響します。「原発性」と違い血中カルシウム値はむしろ低下、リン排泄は低下するため血液中のリン値は上昇し血管の石灰化に強く影響します。
治療
この病気は「リン」をコントロールすることが重要となり、リン吸着薬などを使用します。同時に、副甲状腺ホルモンを低下させるための薬(カルシウム受容体作動薬、ビタミンD製剤)や骨粗鬆症(ビスフォスフォネート製剤・SERMなど)の薬を内服していただく場合があります。