バセドウ病
甲状腺ホルモンが過剰につくられる病気、すなわち甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気です。女性に多く、発病年齢は20歳代、30歳代に多い病気です。自己免疫疾患が原因で、甲状腺が異物とみなされ、過剰に刺激されることにより発病します。
症状
代表的な症状は、動悸、頻脈、息切れ、手の震え、食欲増進、体重減少など甲状腺ホルモン過剰になることによって起こります。また、甲状腺の腫れや眼の突出、脛骨前粘液種など伴うことがあります。
治療について
治療には、「抗甲状腺薬」「放射性ヨウ素内用療法」「手術」の3種類があります。第一選択は、抗甲状腺薬の内服となります。
抗甲状腺薬
バセドウ病の診断がつけば、まず抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール(チウラジール))を服用します。血液中の甲状腺ホルモン値を確認しながら徐々に減量していきます。薬による副作用(顆粒球減少症、肝機能障害、湿疹やかゆみ)には注意が必要です。特に注意が必要なのが、「無顆粒球症」です。顆粒球とは白血球の一種で細菌感染から体を守る細胞です。これが抗甲状腺薬の影響で減少し、重篤な感染症を生じてしまいます。そのため、内服開始後2か月は、2週間に1回の白血球数のチェックが推奨されております。38℃以上の発熱やひどい咽頭痛を認めるときも注意が必要な副作用ですので、速やかに血液検査で白血球(顆粒球数)を測定しましょう。
一般に抗甲状腺薬は2年あるいはそれ以上の内服期間を必要としますが、⑴副作用を認める例、⑵1.5~2年の服用で薬を減量することができない場合、⑶再発・再燃の場合は、放射性ヨウ素内用療法や手術への変更を検討すべきでしょう。
放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)
甲状腺ホルモンは、ヨウ素を原料としているため、摂取されたヨウ素のほとんどは甲状腺に取り込まれます。この性質を利用して、ヨウ素の放射性同位元素である放射性ヨウ素(131I)をカプセルとして内服するのが放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)です。甲状腺に取り込まれた放射性ヨウ素は、甲状腺細胞を破壊しその結果、甲状腺機能亢進症は改善していきます。
手術
抗甲状腺薬が副作用で継続できない場合、非常に大きな甲状腺腫、甲状腺がんの合併、重症の甲状腺眼症(眼球突出)、早期挙児希望などの場合は、甲状腺全摘術が考慮されます。以前は、甲状腺亜全摘術で、甲状腺組織の一部を温存していましたが、再発回避のために全摘術が手術の主流となっています。
亜急性甲状腺炎
炎症により甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンが漏出して機能亢進を呈する病気で、頚部に痛みや発熱を伴います。ウイルス感染の関連が示唆されていますがまだよくわかっていません。
症状
首の強い痛み、発熱、甲状腺機能亢進による動悸、手の震え、痛みの移動。
初期は片側のみに疼痛が限局し、経過と伴に炎症は対側に移動します(クリーピング)。甲状腺の炎症後変化により、甲状腺機能低下に移行する事があります。
治療について
症状により、ステロイド薬の内服や非ステロイド性抗炎症薬の内服となります。
無痛性甲状腺炎
甲状腺に対する免疫の異常が原因で甲状腺が破壊され、甲状腺内の甲状腺ホルモンが血液中へ漏れ出し、一時的な甲状腺機能亢進となる病気です。橋本病の方に発症することが多いとされています。
症状
痛みがないことが亜急性甲状腺炎との違いです。
治療について
特に治療をしなくても、数か月以内に改善することが多いです。
中毒性結節性甲状腺腫
(機能性結節、プランマ―病)
甲状腺の腫瘤から甲状腺ホルモンを過剰に分泌してしまう病気です。腫瘤が1つの場合はプランマー病ともいいます。
治療はアイソトープ(放射性ヨウ素)治療もしくは手術が推奨されます。